毎日お疲れ様です! yolicoです。
今日はAmazon Prime Video で配信中の『落下の解剖学』を鑑賞しました。
2023年に劇場公開のフランス映画です。
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが——。
Amazon Prime Video より引用
雪山に建つ山荘での出来事
雪山にポツンと立つ山荘。開放的な室内。燦々と降り注ぐ日差し。
作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)と、彼女の取材にやってきた女学生が、ソファで会話をしています。
ワインを飲んでいるサンドラは、楽しげでご機嫌な様子だけれど、少しはしゃぎ過ぎ?
やがて鳴り出す大音響の音楽。どうやらサンドラの夫サミュエル(サミュエル・タイス)が上の部屋で鳴らしているよう…
何だろう、この状況? 何だか落ち着かない。何だか不穏。何でだろう?
その「何でだろう?」の訳が、徐々にわかっていきます。
法廷で。またはサンドラの回想で。
あまりの大音響に、取材は無理ということになり、女学生は帰っていきます。
そして、サンドラの息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)が愛犬スヌープと散歩に出掛けていきます。
彼は4歳の時に遭った事故のせいで、視覚に障がいがあって、スヌープはそんな彼を誘導する役目も負っているよう。
ダニエルが散歩から帰ってきて、家の前で倒れている父サミュエルを発見します。
頭から血を流し、すでに呼吸はしていない父。
心にダメージを受けそうな、法廷でのやりとり
当初は事故と思われていたサミュエルの転落は、捜査が進むにつれ、不審な点が見つかっていく。
事故だとしたら、こんな風な血痕は付かないだろう…とか。
実際に人形を落としてみる現場検証が、妙にリアルで怖い。
状況から察して、サンドラがサミュエルを突き落としたのではないか?という容疑をかけられ、逮捕。やがて裁判が行われる。
サンドラを弁護するのは、旧知の仲のヴァンサン・レンツィ弁護士(スワン・アルロー)。
検事(アントワーヌ・レナルツ)は赤いマントの衣装を着ていて、弁護人のヴァンサンは黒いマント。
フランスの法廷は、このような服を着用して行われているのですね。
現場にいた11歳の息子ダニエルも証人として裁判に参加。
さまざまな人が証人として証言していく中で、夫婦間の問題・いさかいがあらわになっていく。
それだけでなく、サンドラの過去の浮気・性的嗜好までもが、息子の前でさらけ出される。
どんどんと出てくる、彼女に不利な証言。
サンドラは一貫して「私は殺していない」と主張していますが、事件の前日の夫婦の言い争いが明るみに。
サミュエルが録音していたもの。
最初は穏やかな話し合いも、だんだんと激しくなっていき、最後には物が壊れるような激しい音も聞こえてきます。
その内容は、お互いの主張を述べるだけの、どこまでも平行線をたどる会話。
果たして、司法はどのような判断を下すのか…
父の死や、母の知らなかった(知りたくなかった)側面を知らされることで、おそらく心に傷を負っているダニエルですが、彼も証人として、当日のことや、それ以前の「ある出来事」を必死に振り返ります。
大好きなスヌープに、ある実験を行ったりして…
スヌープは驚くべき名演技で、”パルム・ドッグ賞”を受賞しています。
どうやって撮影したんだろ⁉︎ という演技です。
そして、サンドラを演じたザンドラ・ヒュラー。すごい女優さんでした。
法廷での姿、自宅でダニエルに接している母としての姿、気心が知れた弁護士のヴァンサンと話す時の姿、サミュエルと口論している時の姿。
強くて、でも気弱になったりもして、賢くて、理論的で、とても冷徹で。いろんな側面を演じています。
ラストシーンの余韻が今でも残ります。真実は彼女しか知り得ないのだな、と…
法廷で夫婦が解剖されていく151分の小旅行、ぜひお楽しみください!