毎日お疲れ様です! yolicoです。
今日は「午前十時の映画祭」企画で、映画『アマデウス』[4Kレストア版]を鑑賞。
1984年劇場公開の映画です。
サリエリの視点で語られる、天才モーツァルトの物語
元宮廷音楽家のアントニオ・サリエリ(F・マーリー・エイブラハム)の回想として進む物語。
天才的な才能を持つモーツァルト(トム・ハルス)への嫉妬・羨望。
なぜ、あの俗っぽいモーツァルトに、神はあれほどまでの才能を与えたのか、というサリエリのコンプレックスが物語の核となっていきます。
自分は、すべての欲望を捨て音楽に邁進する、と神に誓ったというのに、なぜ神は自分でなく、モーツァルトを選んだのか、という静かな怒り。
ですが、自分も音楽に携わる者として、モーツァルトの凄まじい才能は痛いほどわかる。
純粋な崇拝と、嫉妬。そして、モーツァルトを破滅に追いやったのは自分だという罪悪感。
そんな複雑な心理を、F・マーリー・エイブラハムが見事に演じ、第57回アカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
18世紀ウィーン宮廷を舞台に、モーツァルトの作品が物語とリンクする
3歳でチェンバロを弾き、5歳で作曲していた、というまさに天才。
次々と作品を書き進めていくモーツァルト。
そんなモーツァルトの有名な作品である「フィガロの結婚」「魔笛」「ドン・ジョバンニ」「レクイエム」などと共に物語も進んでいきます。
劇中で “どんな風に作られたのか” “周囲にどう響いたのか” が映像化されていて、楽曲の魅力が表現されています。
そして、18世紀のウィーンの宮廷文化、劇場、美しい衣装や舞台セットを緻密に再現。
劇場でのオペラシーンなどは、本当に観劇しているかのような臨場感を味わえます。
上流階級向けのオペラ、大衆向けのオペラでは、ウケ方も違ったり。
曲を作って、俳優陣に音楽指導して、指揮して…音楽家とは、なんと体力のいることでしょうか。
名作を量産したモーツァルトは、やはりとても偉大です。
モーツァルトの独特なキャラクター
なんとも自由奔放で、天真爛漫で、独特な(軽薄な)笑い方のモーツァルト。
実在のモーツァルトとは、少し違う人物像と思われますが…
才能という後ろ盾を持ち、多少下品でも愛されるキャラクターとして描かれています。
そんな一面も、サリエリからすると「なんであんなヤツが!」という、憎らしさが増すポイントでしょう。
才能に溢れる反面、お金に困っている生活を送っていて、お酒ばかり飲んでいるという弱さもあり、偉人だけれど人間味に溢れています。
「レクイエム」の作曲シーンがまさに見どころ
サリエリはモーツァルトに「レクイエム」(鎮魂曲)の作曲を依頼して、その曲が出来上がったらモーツァルトを殺し、その葬式で「レクイエム」を自分の作品として発表しよう、というシナリオを描きます。
サリエリは、モーツァルトが父親に対する抑圧を抱えていることを見抜き、以前にモーツァルトの父親がまとった仮装を再現して、彼の家へ作曲の依頼へ行きます。
内心怯えながらも、手付金を受け取り、「レクイエム」に取り組むモーツァルト。
ですが、その頃「魔笛」の作曲も手掛けており、なかなか「レクイエム」を進めることができない。
どんどん酒量も増え、ついには作品の演奏中に倒れてしまいます。
そんなモーツァルトを介護し、家へ送り届けるサリエリ。
モーツァルトは心からのサリエリへの感謝を告げます。
早く「レクイエム」を仕上げてほしいサリエリは、またしても亡き父のコスプレをした依頼人が来たと嘘をつき、追い金を渡す。
「頭の中にはもう作品ができている。だけど、書き上げる時間がない」というモーツァルトに、自分が手伝うと申し出て、二人の共作作業が始まります。
このシーンに、サリエリのモーツァルトへの想いがとても現れています。
モーツァルトの音楽への凄まじい愛、言うなれば熱狂的なファン。
横たわるモーツァルトが口ずさむ音階を、サリエリが楽譜に書き留めていく。
次々と発せられる音色に、書く速度が追いつかない。
「もっとゆっくり」「もう一度」と言いながら、必死に楽譜におこしていくサリエリ。
焦りながらも、そのメロディの美しさに酔いしれている。一音たりとも漏らさぬように必死に書いていく。
もう、恍惚と言ってもおかしくない。すでに「レクイエム」の中にいるサリエリ。
嫉妬しながらも、神がかった才能を崇拝している様子が、とても伝わってきます。
実際の史実とは異なるエンターテインメント
実際のサリエリと、モーツァルトの歴史的事実とは異なるところは多いようで、「もしこうだったら?」というドラマとして描かれています。
天才の才能のもとで、嫉妬に苦しむ凡人、という心理を描いたフィクションとなっています。
老いたサリエリが精神病院で、若い神父にモーツァルトとの一連の出来事を話すシーン。
「この曲を知っているか?」と3つの曲をピアノで弾いて聴かせます。
1、2曲目はサリエリが作った曲。神父は「知らない」と答える。
3曲目はモーツァルトが作った曲で、神父は「知っている」と告げる。
それこそが、”天才と凡人の差”エピソードだな、と思えるのでした。
後世に残っていくのですね、天才の生み出したものは。
音楽家たちの心の軌跡、クラシックに詳しくなくても楽しめるオペラのシーンなど、華やかで、人間臭さも垣間見れる161分の小旅行。ぜひお楽しみください!
