毎日お疲れ様です! yolicoです。
今日はTOHOシネマズにて映画『ハムネット』を鑑賞。
2026年4月劇場公開の映画です。
1580年イギリスの小さな村。貧しいラテン語教師ウィリアム・シェイクスピアは、森を愛する自由奔放なアグネスと出会う。
2人は互いに惹かれ合い、情熱的な恋愛の末に結婚して3人の子供を授かるが、ウィリアムが遠く離れたロンドンで演劇のキャリアを模索する一方、アグネスは独りで子どもたちを守り家庭を支えていた。
そんななか一家に大きな不幸が訪れ、かつて揺るぎなかった夫婦の絆が試されることとなる———。
公式フライヤーより引用
シェイクスピアの妻アグネスをジェシー・バックリーが好演
今作品で、第98回アカデミー賞主演女優賞を獲得した、ジェシー・バックリー。
受賞も納得の演技で、アグネス独自の世界観を見事に演じていました。
アグネスは森が大好き。いえ、大好きと言うより、森の一部として生きている女性。
幼少の頃に亡くした母は「森から来た」と言い伝えられていて、一族の女性にはその血が流れている、と聞かされていました。
薬草に詳しく、タカを手懐けていて、いつも森にいる。最初の出産も森で、一人で乗り越える。
周囲から「魔女」と噂されるのももっともだな…と思わされます。
シェイクスピア(ポール・メスカル)と恋に落ちて、子供ができて、お互いの家族には反対され、でも結婚の運びとなって。
どんな局面でもあたふたせず、未来がまるでお見通しかのような、神秘的な一面を持つアグネス。
3人の子供に恵まれ、夫の才能をダメにしないために、単身ロンドンへ送り出す。
家族への深い愛情を持つアグネスですが、悲しい出来事が一家を襲い、激しい喪失感を味わうこととなります。
夫シェイクスピアの優しさも拒絶し、暗い闇に佇むような日々を送る彼女でしたが、シェイクスピアの劇団の出し物「ハムレット」を鑑賞することで、心に光が差し込んでいくのでした。
その様子を演じるジェシー・バックリーの素晴らしさたるや!
彼女の表情、しぐさ、視線… 大きな動きはないのに、雄大にアグネスの心情を表現しています。
押し付けがましくなく胸に迫る、クロエ・ジャオ監督の演出
『ノマドランド』(2020年)で第93回アカデミー賞の作品賞・監督賞を受賞したクロエ・ジャオ監督の最新作です。
製作には、スティーヴン・スピルバーグとサム・メンデスが名を連ねています。
まず、序盤での森の映像の美しさに心が動かされます。
木々の葉のそよぐ様子や、力強く根を張る巨大な樹々を見ていると、森の素晴らしさが伝わってくるかのような…
家族の楽しげな様子も、悲しみに打ちのめされるアグネスも、そのまま映し出している。
それゆえ、ジェシー・バックリーや、シェークスピア役のポール・メスカルの演技がとても光ります。
静かに進行してゆく物語に、どんどん引き込まれてゆく感覚。
クロエ・ジャオ監督の才能のなせる技だと感じさせられます。
当時の観劇の様子が興味深い
終盤に、兄のバーソロミュー(ジョー・アルウィン)とともに、ロンドンへ夫シェイクスピアに会いにゆく。
彼の劇団の初演となる「ハムレット」を見て、息子の名前の演目であることに憤慨するアグネス。
ですが、当の夫がハムレットの亡き父の亡霊として登場するのを見て、徐々に物語に引き込まれていくのでした。
そこからの彼女の心情の変化は、ジェシー・バックリーの演技で余す所なく伝わってきますが、その観劇のスタイルもとても興味をひくものでした。
舞台の正面には席などなく、観客は立ったままで、先頭の人は舞台にかぶり付いて鑑賞しています。
劇中でハムレットの死の場面では、思わず俳優に手を差し伸べるアグネス。
それにつられて、他の観客も次々と彼に手を伸ばしていくシーンは、意表をつかれますがとても感動的でした。
役者さんはびっくりするでしょうが、ある意味役者冥利に尽きるのでは…
舞台を通して、アグネスの、夫シェイクスピアの、悲しみからの再生を感じ、アグネスの笑顔にほのかな希望を感じるのでした。
シェイクスピアや演劇に詳しくなくても、シェイクスピア夫妻の、夫婦の絆を描いた物語としてとても素晴らしい作品です。
悲劇を経験してからの、喪失感、虚無、気付き、そして再生を感じられる126分の小旅行。ぜひお楽しみください。
